アッラン・ゲマース・テル's BLOG

男もすなる日記といふものを日ぐらし硯に向かひて諸行無常の響きあり。

GWにかこつけて金髪にしたけど実はゴールドじゃなくてブロンドっていうらしいorz

「そうだ、金髪、しよう」

――それは、ほんの軽い出来心だった。
麩菓子か綿アメなみに軽率で、軽薄で、軽動脈な発想だった。
もはや躁だった。

ゴールデンウィークなんだから、アタマもゴールデンでいいんじゃね?
ゴールデンヘアーでボンバーヘアーなホリデーヘアーでゴーじゃね??


そもそも、奇跡の10連休なんか取れちゃったから、こっちも調子が狂ってしまうのだ。アタマも狂ってくるってわけなのだ。
砂糖やミルクが一切存在しないかのごときこのブラックな会社で、まさかの大型連休。

おお、タガが外れてしまって連続急発進。
ゴー、ゴー、ゴールデンウィーク


そんなわけで、残業を早めに切り上げた僕は、渋谷のほうに向かっていた。4月28日、渋谷の日という、これまた軽動脈な発作で。

もっとも、実際にたどり着いたのは地元の美容室である。
「消防署のほうから来ました」式の、あの論法である。
気分だけは小洒落た若者のつもりで。自分だけは駄洒落た馬鹿者がつまりで。

ていうかね、さすがにこれから髪色で冒険するっていうのに、ファッション・シティにある初見・サロンに入る勇気まではなかったんだよ。
だって、人生最初(でおそらく最後)のブリーチだぜ? おお、黒崎一期一会でガッシュな金色よ!

こうして今週のお題ゴールデンウィーク2016」・オブ・マインの扉は開いた。


扉を開くなり今日はブリーチしたい旨を伝えると、にじみ出る驚きの念をもって迎えられた。
それはちょうど、誰にも気づかれずにすかしっ屁をしようとして失敗し、妙に甲高い放屁音が漏れたときに似ていた。

しかしそれも無理はないだろう。

スーツにネクタイ、メガネにビジネスバッグといった出で立ちの「ザ・サラリーマン」的な冴えない男の口から、よもや「ブリーチ」などという単語が飛び出すとは!
もはや大失敗した放屁音と間違えられても仕方のないくらい意外な展開である。

なお、突発で美容室に来ることにしたものの用意周到な僕は電車に乗っている間にこの店のクーポンを用意していたのだがその旨を伝えた際は「あ、皆さんクーポン価格でやらせてもらってるんで」と梅酒以上にサラリと流された。


軽くカットが終わり、いよいよブリーチだ。
茶髪はおろか白髪染めもしたことのない僕は、少し緊張してきた。

「こんな感じですか?」と担当の美容師さんが雑誌のあるページを開いて尋ねた。が、僕には緊張のせいか茶色にしか見えない。
「いえ、もっと明るい感じです」
「では、これくらいですか?」
やはり茶髪の範疇だ。
「いえ、とにかく明るい金髪です」

僕の頭の中で、いつの間にか消えていった半裸の芸人が踊りだした。

「安心してください、僕が探します」
何に安心すれば良いのか自分でもわからなかったが、とりあえず雑誌を受け取って片っ端からめくりまくってみてみることにした。

ところが、金髪と呼べるものは、男性誌にも女性誌にも全く見つけられない。
今や金髪などダサいもので、紙面から跡形もなく消されてしまったのだろうか。

ミルクティブラウンなど明るめの色はあるのだが、あくまで茶色、ブラウンなのだ。ブラウンウィークなのだ。髭剃りウィークかよ!
むしろこの10日間は剃るのサボってもOKなのに。ボサボサボサってもOK牧場なのに僕。

「一番じゃなきゃダメですか?」
はい、三番じゃダメです! 銅色じゃなくって金色にしたいのです。
僕に安村ゴールドをください。

とある世界では大便のことを黄金というらしいけど、それだって茶色じゃんダメじゃん臭う様じゃん。


もともと僕は極端な性格である。
ゴールデンウィーク関係なく、やるなら黒髪から金髪というこの振れ幅が大事なのだ。もしくは赤毛とか。
中途半端に茶髪なんてあり得ないのだ。

てか黒髪はくろ「かみ」なのに茶髪や金髪は「ぱつ」ってどういうことなの? 白髪は「が」??
赤毛にいたっては髪じゃなくて「毛」だし。不統一感も甚だし。
あ、赤髪だと赤紙に通じるからかな??

じゃあ緑髪は? 青は? 桃髪にいたっては「頭髪」と音かぶるよね。ヅラじゃなくてもかぶるよね。
「とうとうとうほうのとうはつもとうはつになどもうとう……」

何の話だっけ。


閑話休題、グーグル先生 on スマホを駆使するなどして、ようやくイメージの色味は伝わったんである。
「ここまで明るくするには2回はブリーチしないと難しいですね。お値段はその分2倍かかってしまいますが……」
「あと、かなり傷むのでトリートメントをしたほうがいいです。うちではこの4種類ありまして、オススメなのはこれで……」

客単を上げようと言葉巧みにセールストークをしてくる美容師さん。
頭の中で計算機を必死で叩いて財布と安村と相談する僕。

「とりあえずハイブリーチ1回して様子を見てみたいです。トリートメントも一番安村で」
連休の予算を一発ネタに全ツッパするわけにもいかないので、恥をしのんで最低ラインでリーチした。


トリートメント剤をつけた後、2種類の薬剤をまぜて髪束に塗りこんでゆく。
特徴的な臭いと、そして……熱いぞ!?

根元に塗りだしたとたん感じる、猛烈な刺激。熱さ。

ちょ、一発ネタのためにもしや頭皮そうとう犠牲にしてないか? そうそう犠牲にしたくないが? 毛根ダメージ激しくないか?
ハゲたくないまだ、やっぱやめます!!


薬剤をつけてラップをし、30分ほど痛熱さに耐えた頃だろうか。
気がつけば、鏡の中には変わり果てた痛い髪色の自分がそこにいた。
それは街中の注意信号も真っ青の黄色っぷりだった。

後悔しても、もうこの航海は戻れない。
そういえば社会の時間、紅海と黄海ってよくごっちゃになってたよな――
そんなどうでもいいことばかりがアタマをよぎった。

「ああ、思ったよりもしっかりした金髪になりましたね」
美容師さんも驚きの白さ、もとい明るさのようだ。
お墨付きを得たのでやったぜブリーチ代1回分で済む!

それでも、自分史上最高値更新となる散髪で5桁のお支払いをして帰りましたのだ。
QBハウスなら10回行けるじゃん。


後でわかったことだが、色のヌケが良かったのは、僕の髪が男にしては細かったかららしい。
いわゆる猫っ毛というやつである。
いや、ネコっ気は全くないんだけども。ノン気だけども。まだノン毛ではないけども。

短髪にしても立ちが悪く、ワックスつけて家を出ても次に鏡を見たときにはもうしなっているのが軽くコンプレックスだったけど、こんなところでプラスに出るとは……
いや、タチは悪くないんだけども。てかもうずいぶんとそういう機会に恵まれてないんだけども。けども。
彼女募集中です!


出オチネタなもんで、その後特に何かあったわけでもなく。

ただ、金髪には意外と早く慣れたと思う。
自分の適応力には自分でも驚くほどだったね。
それはもう、僕カメレオンかなってぐらいには(not ヤンキー)。

例えばたまたま以前の黒髪が部屋で見つかると「あれ、誰かうち呼んだっけ?」って一瞬真剣に考えるぐらいには、自分をもう金髪認識してる。
髭やシモの毛を見たときも、黒いのに違和感を覚えてる。
脱色したのアタマだけなのに過剰認識してる。
認知ではないはず。


誤算だったのは、生え際が後退しているように見えること。
僕の肌、黄色人種中の黄色人種だから、黄色どうしで前髪消える的なマジックなんですね。
マジックで描いてやろうか。

逆に良かった点としては、フケも抜け毛も目立たないこと。
もちろん風呂も入るし掃除もしてる。あくまでメリットを探すと、の話である。
つまり、1万数千円かけて、それぐらいしか利点のないことが判明したのであるぐぎぎ。
ドクターイエロー呼んでくれ。


1週間もすると、既に根元の黒さが目立ってきた。
いわゆるプリン状態というやつである。
僕はやっぱりがっつりむっつりエロかったのか。
十割蕎麦なみに伸びるのが早い。

で、何て言うかこれ、想像以上にダサい。
僕は一時の気の迷いだからいいけど、ずっと黄迷ってる人はメンテすげえ大変じゃん。
素直に尊敬するわ、そんなことで尊敬されても嬉しくないかもだけど。
金のアタマ維持するのにめちゃくちゃ金かかることよ……
金のタマの話は今関係ないことよ……

ところで、ブリーチした結果、猫っ毛はさらに細くなってるんである。弱くなってるんである。
櫛を駆使してアタマを整えるたび、プチンと大量に髪が切れる。プッチンプチンと髪が途中で切れる。

まさしくプッチンプリンである。

そうえいば丼プリンとかいうやつを食べたけど、あれはさすがに後で気持ち悪くなった。
格好だけは若くても胃腸はおじさんなりカッコ泣き。


どうせならこのまま連休が恒久に続けば幸福なのだけど、そうすると待っているのは困窮だけなので、社会復帰せねばならない。
ゴールデンボンバーヘッドだけど女々しいことは言ってられない。
ケジメとして5月6日のゴムの日に、水道屋さん風に言うとパッキンの日に、逆に髪金とオサラバしたのであった。

染髪童貞だから知らなかったのだけど、黒戻しって最初はめちゃくちゃわざとらしい色になる。
知らなかったよゴッドファーザー
ゴールドからブラックにしたの丸わかりじゃん。
どうせならカードもブラックにしたいよママン。

僕のアタマは今まさにブラック。
僕の職場も今やはりブラック。
今流行りのブラック。


社会復帰3日目にして既に勤務時間は40時間を超えた。
以前にも増して射干玉の闇よりも深き漆黒の職場となりつつありおりはべりいまそかり。

えっと、労基法的には今週もう来なくてもいい計算になるよね?


この調子だと、来たる9月のシルバーウィークには、美容室に行かずとも銀髪になっている予感しかしない。